習慣新書

新書を片っ端から紹介していくブログです。1年間に200~300冊程度紹介するのを目標にしています。

対中強硬姿勢こそが平和への道。中国の戦略分析には必読の書。 『中国4.0』(文春新書)エドワード・ルトワック

中国という困った隣人は一体何を考えて行動しているのだろう。それを分析した元シンクタンク上級顧問の書である。 ルトワック氏によると20世紀末から21世紀初頭にかけて、中国は世界の市場に平和的な形で参入した。氏はこの戦略を「中国1.0」(チュウゴクで…

科学は真理に近づけるが真理に到達できない 『99.9%は仮説』(光文社新書)竹内薫著

科学において通説は常にくつがえる可能性を持っている。それゆえ、今日真実だと思っていたものが、明日は真っ赤なウソになる可能性があるし、その逆だってありうる。本書では遠慮がちに99.9%と書いているが、それは限りなく100%に近い。もちろん100%と書い…

何ともお買い得。美術通でなくても美術館に行きたくなる本 『印象派で「近代」を読む』(NHK出版新書)中野京子

何ともお買い得な本である。オールカラーの印象派の名画が見開きで26作品掲載され、さらに40点以上も小さな枠で印象派やそれ以外の絵が載っている。さほど絵に詳しくなくても、どの絵もどこかで見た事のあるものばかりだ。 本書は単なる名画の解説ではなく…

自己啓発本を買うのが恥ずかしい人に 『人間を磨く』 田坂広志 光文社新書 

自己啓発本を買うのは中々勇気がいるものだ。 どこの職場にも仕事のできない「自己啓発本オタク」がいるので、彼らと同類と思われたくない。そもそもインテリが読む本ではない。何か悩んでいるみたいに思われそう等々。手に取れない理由は色々あると思う。 …

郊外に住む人の心臓に悪い本  『東京どこに住む?』朝日新書 速水健朗

戦後第3回目の人口東京一極集中が始まっている。第1回が高度成長期だ。この時期の人口東京一極集中は、日本社会にとって好ましい高度成長だった。重化学工業を発達させ経済大国へと発展するためには、工業に携わる都市住民の増加は不可欠である。第2回目…

メディアのアンフェアさを理解するのに最適の書 『護憲派メディアの何が気持ち悪いのか』(PHP新書) 潮匡人

この本は平和安全法案が成立する直前に書かれ、成立直後に出版された。 それゆえ、デタラメな報道を繰り広げる潮氏の怒りがよく表れている。 私は、他人を「気持ち悪い」と誹謗することを良しとはしないが、自称平和主義の護憲派に差別され続けてきた元自衛…

「科学」と「信仰」と「神秘主義」、この深遠な関係に挑む  『ダ・ヴィンチの謎、ニュートンの奇跡』(祥伝社新書)  三田 雅広

無邪気に「科学的結論」を信じることが如何に愚かしいかについては枚挙に暇がない。 例えば、精神医療の世界では1935年に「ロボトミー手術」という前頭葉の一部を切除する手術が当時の「科学」の最先端だった。この手術をご存知の方は、統合失調症の治療と思…

左翼系学者の挑戦と限界   『「安倍一強」の謎』(朝日新書) 牧原 出

民主党政権が終焉し、政治の世界では「安倍一強」時代が続いている。本書は左翼系の大学教授がその謎の解明に挑戦した著作である。 第1章では、与党しか知らなかった自民党が、3年間の民主党政権を経験して「政権交代を知る」より逞しい政党に変化したと分…

家康が三河守(みかわのかみ)で信長が上総介(かずさのすけ)なのは何故? 『格差と序列の日本史』(新潮新書) 山本博文

山本氏は東京大学資料編纂所の教授である。おそらくは教育よりも圧倒的に研究を主体とする学者だと思われる。そして、如何にも学者らしく「格差」と「序列」を別物として考える。 会社に社長、部長、課長、係長、主任、ヒラが存在するように、どんな組織にも…

創作は孤独とともにある。 『孤独の価値』(幻冬舎新書) 森 博嗣

『すべてがFになる』でデビューし、スカイ・クロラシリーズなどヒット作を出し続けた作家の「孤独」という問題を中心にした人生論。 工学博士でもある著者は、まず人はなぜ孤独を恐れるのかを考える。そして、彼は、群れをなす動物である人間の本能として一…

我々が品格を取り戻すための処方箋 『日本人の品格』(ベスト新書) 渡部昇一

渡部昇一氏は私にとって北極星のような方だ。思えば中学生か高校生だった頃、人生で初めて読んだ新書が氏の著した『知的生活の方法』だった。その後、大学時代に、左派的思想に影響されがちな私の目を覚まさせてくれたのも、氏の論壇誌における言論活動だっ…

格闘ゲームは人をかくもクレバーにするのか 『悩みどころ逃げどころ』(小学館新書) ちきりん&梅原大悟

ちきりん氏は、ブログをやる人なら誰もが知るアルファブロガーである。そして、何度か彼女のブログを読んだ人ならば、彼女が外資系の金融会社に勤めていたエリートで、今はビジネスの世界をリタイアし、悠々自適のブロガー生活を送っている事もご存じだろう…

沖縄問題を除けば参考になる、沖縄独立派の著作  『使える地政学』朝日新書 佐藤優

地政学とは地理的な環境が政治的、軍事的、経済的な側面で国家や民族に与える影響を、イデオロギーを排して冷静に分析しようとする学問である。 本書は、地政学に基づいて2016年現在の国際情勢を読み解いた書物だ。 日本では、イデオロギーで世の中を捉えよ…

認知行動療法の成果を健常者の日常に生かす   『「おめでたい人」の思考は現実化する』(小学館新書) 和田秀樹

現代では「おめでたい人」というのは、おバカさんのニュアンスを含んだ貶し言葉である。しかし、「おめでたい」は元々寿ぐ言葉なのだから、「おめでたい人」もそうあるべきではないか?本書はそう訴える。 その上で和田氏は「おめでたい人」にも二種類あって…

語彙は教養にとって大きな要素だ。しかし、要素に過ぎない。   『語彙力こそが教養である』(角川新書)斉藤孝

『声に出して読みたい日本語』(草思社)で一世を風靡した斉藤孝氏ならではの主張が詰まった本である。著者が言いたい事はタイトルでほぼ言い表されているが、こういう「伝わればいいんでしょ」という発想こそ、斉藤氏が忌み嫌うところである。本書の醍醐味…

表題には異議あり。EUはキリスト教に原点回帰している。    『イスラム化するヨーロッパ』新潮新書 三井美奈

国内問題とアメリカ大統領選挙の報道で、ここ2、3か月、日本人の関心はヨーロッパから遠ざかっているようだが、ヨーロッパに安定が来る日は遠そうだ。ユーロに加盟している弱小国はギリシアに限らず、どの国が財政破綻してもおかしくない。経済がおかしく…

学校の今を知るための本 『スクールカーストの正体』(小学館)

紙媒体で「スクールカースト」という概念を初めて取り上げたのは、拙著『いじめの構造』(2007新潮社)である。それまでネットスラングに過ぎなかったこの言葉を取り上げるにはそれなりの軋轢があったが、ついに現役の中学教員がこういう本を書く時代が来た…

新書を紹介するブログはじめました

「はてな」界隈で騒がれていた「スクールカースト」を世に広めた、森口朗です。本日、2016年6月1日でめでたく56歳になりました。 約2か月前に32年間務めた都庁を退職し、晴れて自由の身になり、 様々な事に取り組んできましたが、このブログはどうしてもやり…