現代では「おめでたい人」というのは、おバカさんのニュアンスを含んだ貶し言葉である。しかし、「おめでたい」は元々寿ぐ言葉なのだから、「おめでたい人」もそうあるべきではないか?本書はそう訴える。
その上で和田氏は「おめでたい人」にも二種類あって「いいタイプのおめでない人」と「悪いタイプのおめでたい人」がいるという。両者は次のような人達だ。
(いいタイプのおめでたい人)
・周囲の批判を気にしない。
・まずは行動してみる。
・うまく行かなければ、次に行く身軽さ
・正解などない、と思う知的謙虚さ
(悪いタイプのおめでたい人)
・自分が正しいと信じて疑わない
・世間で言われていることをうのみにしてしまう
・いったん信じると、ほかの人の声に耳を貸さない
・だまされていることに気づかない
なるほど、どちらも「おめでたい人」かもしれないが、相当に異なるタイプだ。精神科医である和田氏は、両者のおめでたさの根本的な違いは「認知」の仕方の癖にあると考える。だから「認知」の仕方を変えれば世の中の見え方が変わり、それが自分の行動を積極的なものに変え、さらには運やツキも引き寄せられる、という訳だ。
本書では、具体的に「おめでたい人」になるためのトレーニング法も紹介されている。どれも納得できるものだが、笑えたのは「高田順次ならどうか考えるか」を想定するというメソッドだった。これは、自分も使ってみたい。
ところで、和田氏はメディアに登場した頃は、どちらかというと保守系の方と認識していたのだが、近年ではすっかり左に行ってしまったようだ。政治スタンスでこの本の値打ちは変わらないと思うが、「認知のあり方を変えよう」という本で、政治の話を引き合いに出しすぎると読者に無駄なストレスを与えるのではと、他人事ながら心配になった。