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習慣新書

新書を片っ端から紹介していくブログです。1年間に200~300冊程度紹介するのを目標にしています。

科学は真理に近づけるが真理に到達できない 『99.9%は仮説』(光文社新書)竹内薫著

 科学において通説は常にくつがえる可能性を持っている。それゆえ、今日真実だと思っていたものが、明日は真っ赤なウソになる可能性があるし、その逆だってありうる。本書では遠慮がちに99.9%と書いているが、それは限りなく100%に近い。もちろん100%と書いてしまうと「科学における学説は全て仮説である」という理論のくつがえる可能性を否定していることになる。それゆえの99.9%なのだ。
 本書では、ある時代に真理だと考えられていた学説がいかにして覆っていったかを具体例を挙げながら丁寧に説明している。科学的な知識がなくても十分に読めるはずだ。
私は、冒頭に紹介される「飛行機が何故飛ぶかが分かっていない」という例に驚かされた。まさに著者の思う壺である。しかも、竹内氏が「子供だましの説明」と紹介している説を、本書を読むまで信じていたのである。
いや、確か中学の理科か高校の物理で以下のように習ったと思う。

飛行機の羽は上部が曲がっていて下部は直線である。従って羽の後で空気が合流するまでに上部の方が早いスピードで空気が動く。早いスピードで空気が動くとそちら(上部)の気圧が低くなり揚力が生まれる。

ところが、これが真っ赤なウソで、羽に当って分かれた空気は羽の後部で合流しないそうだ。言われてみれば、分かれた空気が合流する必要などない。ただし、合流はしないが、どういう訳か上部の方が早く動くらしい。だから羽に揚力が起きるのは正しい。でも、その理由は今のところ不明(有力説はある)とのこと。

ますます飛行機に乗るのがいやになりそうな話だ。その他、一度否定されたアインシュタインの「宇宙定数」が、現代によみがえった話も興味深い。これも、私は宇宙の始まりについてはビッグバン仮説までしか知らなかったのだが、現代では宇宙は加速度的に膨張している事が確かめられているので、ビッグバン仮説だけでは説明できないとの事。

とにかく、飲んだ席での話すネタにするもよし、一人ほくそ笑むもよし。興味深いネタにあふれている。「科学と他の思想を分かつのは『反証可能性』である」というカール・ポパーの珠玉の言葉が書かれているのも、個人的には嬉しかった。

その時点の学説を妄信する愚かさと、それでも真理に近づこうとする科学者達への尊敬を同時に感じられる良書である。

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