習慣新書

新書を片っ端から紹介していくブログです。1年間に200~300冊程度紹介するのを目標にしています。

学校の今を知るための本 『スクールカーストの正体』(小学館)

 紙媒体で「スクールカースト」という概念を初めて取り上げたのは、拙著『いじめの構造』(2007新潮社)である。それまでネットスラングに過ぎなかったこの言葉を取り上げるにはそれなりの軋轢があったが、ついに現役の中学教員がこういう本を書く時代が来たと思うと感慨深いものがある。
 さらに嬉しいのは、著者の堀氏がスクールカーストの決定要因「自己主張力」「同調力」「共感力」を拙著のまま踏襲し、どの力を持つかによってクラス内の大まかな役割(キャラ)分担が決まる点まで採用してくれた事である。現役教師に大きな影響力を有する彼にとって、この分類は腑に落ちるものだったのだろう。
 さて、本書ではスクールカーストの存在を前提として、現場の教師は日々の課題にどう立ち向かうべきかを具体的に記している。スクールカーストを意識する必要が一番あるのは「いじめ問題」への対応だが、それ以外でも合唱コンクールの指揮者に選ばれた女子が不登校気味になる事例など、現場を知りぬく教師にしかかけない視点が随所にちりばめられている。そして、教師の側にもカーストがあるという暴露話も記されている(これは私の実感とも概ね合致している)。
 堀氏は、北海道をはじめ全国で勉強会を行っており、そこでは拙著を出した直後からスクールカーストという概念を教員に紹介し、それを前提とした指導の大切さを力説しており、本書は満を持しての出版したものだ。学校現場の今を知りたい方は是非読んでほしい。

 裏話になるが、実は堀氏が『スクールカーストの正体』を発刊するにあたり、小学館から献本を頂戴した。かなり詳細に拙著を引用してくれているので、自分のブログに紹介するのが礼儀と思ったのだが、実はその時すでに都庁を退職する意思が決まっており、新書を紹介していくブログの立ち上げも企画していた。そして、第1回は本書にすることを心に決めていたのだ。

 改めて堀氏及び小学館に御礼申し上げるとともに、ここまで伸ばしてしまった(つまり、売上の初速に貢献できなかった)事をお詫びしたい。